明治期、東洋紡の創始者として知られる第十世伊藤伝七翁が築いた邸宅として、
伝七邸の歴史は始まります。
実業界の重鎮であった伝七が、来賓や要人をもてなすためにこの地に設けた邸宅は、
時代の先進性と美意識を宿した迎賓の場として整えられていきました。

その後、時代が移り変わるなかで、邸宅は料亭として活用され、
地域の文化と社交の場として長く親しまれてきました。
しかし、建物の老朽化や運営の困難が重なり、
邸宅の存続が危ぶまれる時期も訪れます。

そうした中、
九鬼水軍を率いた九鬼嘉隆の血脈を継ぐ 第十一代九鬼紋七が、
料亭として残されていた伝七邸の文化的価値を守り継ぐべく立ち上がり、
建物の保全と再生に力を注ぐことになります。
かつて第八代九鬼紋七が伊藤伝七を支援した縁が時を越えてつながり、
伝七邸を未来につなぐ大きな原動力となりました。

令和の現在、伝七邸は歴史的邸宅としての品格を保ちながら、
文化・食・もてなしの空間として新たな歩みを続けています。

伊藤伝七が築き、九鬼家の縁によって守り継がれてきた
伝七邸の歴史文化は、今もなおここに息づいています。